「考える力を養うために、あえて突き放す」やり方って、超高等技術で危険も高いと思うんだよな…。
みなさん こんにちは おりばーです。
「考える力を養うために、あえて突き放す」
こういった謳い文句で、部下や後輩を千尋の谷に突き落とす教育方針をみたことありませんか?
以前僕が書いた「成長のためにあえて厳しくしている」の、亜種のようなものだと考えられます。
今日は、「考える力を養うために、あえて突き放す」やり方って、果たしてどうなんだろうな?と思ったので、記事に書かせていただきました。
「考える力を養うために、あえて突き放す」とドヤっていた管理職
考える力を養うために、あえて突き放している
もうかれこれ15~16年前の話になりますが、僕が20代の頃に働いていた職場で起こった出来事を紹介します。
登場人物
U田さん:プロジェクトの責任者、Wくんの上司
Wくん:僕の同僚 僕より年齢が少し下くらい
当時働いていた職場では、いくつかのチームに分かれて仕事をしていて、U田さんが何人かの部下を率いて、プロジェクトを進めていました。
僕とは違うチームだったので、一緒に仕事をすることはほとんどありませんでしたが、打合せや話している内容は見聞きしていたので、僕にも状況がなんとなーくわかるという感じ。
このU田さん、「部下に厳しい人」で有名で、事あるごとに部下に「自分で考えろ」と突き放していました。
部下の人が、困ったことがあったから相談したり、分からないことがあって教えてほしくて聞きにいっても、「自分で考えろ」の一点張り…
さすがに周りの人からも、「さすがに、厳しすぎやしないか?」という声が上がり、それとなく注意をしたりしてたらしいのですが、それに対してU田さんの言うことはいつも一緒…
なまじ正しいことをしているっぽいし、「そういう教育方針だ」という言い分なので、誰もこれ以上のことはなんも言えない状況になっていました。
確かに、「考える力」をつけることは大切です。
「いつもいつも人に聞いたり、頼ったりしていたのでは、いつまでたっても考える力や技術が身につかず、一人立ちできない…」という言い分も一理あると思います。
「魚を釣って与えるのではなく、魚の釣り方を教えることが大事」ってヤツですね。
なので、この教育のやり方自体は100%否定はできないというのが、僕の考えです。
Wくんも、聞きたいことや分からないことがあっても、自分の力で何とかするしかないという状況を、しぶしぶながら受け入れて四苦八苦しているような感じがしました。
Wくんが、精神を病みかけチームを移りたいと進言してきた
ところが、事態は思わぬ方向に転がっていくことになります。
数か月後、Wくんの様子がおかしくなってしまい、「チームを移りたい」という進言してきました。 原因は、明らかにU田さんとの関係性&仕事だということ。
そしてこの時、プロジェクト自体の進捗も悪く、リカバリーが極めて難しい炎上状態になっていたと聞きました。
おそらく、Wくんはそのことも気に病んで精神的に参ってしまったのでしょう
当然、状況の確認と責任の追及がU田さんのところに及びます。
人から聞いた内容ですが、U田さんはこんなことを供述していたそうです
完全に証言の仕方がテレビでよく見る『容疑者』やないか
結局、WくんはU田さんの仕事から離れることになり、このプロジェクトもグタグタになっていつの間にか立ち消え状態になりました。
「考える力を養うために、あえて突き放す」やり方は危険と隣り合わせ
「考える力を養うために、あえて突き放す」というやり方は、いかにも職人っぽくて耳障りのいい指導方法なので、世間から賞賛されがちです。
ただ、僕は上記U田さんとWくんの事例も見てきたので、強く言いたいのですが…
「考える力を養うために、あえて突き放す」ってやり方…結構危険度も高く、リスキーなやり方なんじゃないかと思っています。
このやり方を敢行しようとすると、色々な問題点や弊害も出てくるからです
①単純にプロジェクトを担当に丸投げ状態になるので、問題が発生しても気づきにくい
まず、「自分で考えろ」と常に部下を突き放している人って、基本的に業務中に発生した問題に対しても部下任せになっていることが多いです。
任せているといえば聞こえはいいですが、単に「やっといて」の丸投げ状態だったりするケースも。
そして、フタを開けてみたらプロジェクトの進捗が、全然進んでなかったということも考えられます。
②困ったことがあったり、分からないことがあっても相談できない
また、いつも突き放され続けた場合、困ったことがあったり、分からないことが有っても相談しにくくなってしまいます。
相談をしても、結局はどうすればいいか指示やアドバイスをもらえず、突き放されてしまうわけですからね。
これは、Wくんが実際に言っていたことですが、困ったことがあっても、U田さんにはだんだんと相談しなくなっていったそうです
言われてみれば当然のことで、いつも冷たく突き放してくるばっかりの人に、誰が好き好んで相談なんかするかって話なんです。
僕も、相談しても特にアドバイスや指示をもらえるわけではない人には、わざわざ相談したくないなって思います。 それが人の情というものです。
そして、身近に相談できる相手がいないって、精神的にはかなりキツイ状況です。
精神を病んでしまったり、イヤになって離職を考える可能性だってあるわけです。
③時間をかけて考えさせたところで、「考える力」は身に着くのだろうか?
また、「あえて考えさせる」という突き放すやり方が、果たして考える力を身に付けるのに有効に寄与するのかも、かなり怪しいと思っています。
「怠慢すぎだろい…」ってハタから見ていて思いました。
「自分で考えろ」と突き放されて、ウンウン一人で考えぬいた結果、「パッ」と言い考えがひらめき状況が打破できて、結果「考える力が身に付きました!」 テ~テッテテ~♪
…なんて状況、100%無いとは言いませんが、限りなく少なくないですか?
考える力は、ある程度の考え方ややり方を、学んだ上で養われるものです。
「現段階で分からないものは、いくら考えても分からないまま」…ということは、往々にしてあり得ます。
ジグソーパズルで例えるなら、全体的な絵の構造が分かっていて、いくつかのピースを持った状態でないと、「考える」どころの話じゃないだろってことなんです。
それを勘違いして、パズルのピースも渡されず、どんな全体の絵なのかもわからず、ただ「自分で考えろ!」なんて無茶振りもいいところです。
もちろん、時間的猶予がたっぷりあるのなら、「トコトンじっくり考えてみろ」というのも悪くないでしょう。
ですが、時間的猶予がたっぷりある仕事や状況なんて、そうそうあるもんじゃない。
厳しい納期や差し迫った状況下で、仕事をしていかないといけない状況が殆どです。
そんな状況下で「自分で考えろ」と突き放されたら、精神的に参ってしまうのは自明の理だと思います。
「考える力を養うために、あえて突き放す」やり方が、成立するためには前提条件が必要
「考える力を養うために、あえて突き放す」ってやり方…実は危険度も高く、リスキーな超高等技術なのです。
このやり方をやるためには、色々と前提条件がそろっていないといけないと思います。
「考える力を養うために、あえて突き放す」やり方を敢行するための前提条件
①考えさせてもいいけど、フォローはしっかりすること
②部下が失敗しても深刻な被害が出ず、最悪上司が巻き取れること
③部下との信頼関係が出来ている事
①考えさせてもいいけど、フォローはしっかりすること
考えさせるのはいいけど、突き放してばっかりでなんのフォローもしないと、「部下がどんな状態なのか?」 「何が分からないのか?」が把握できず、まったく何も進んでいない状態になりかねません。
そして、最悪の場合「メンタルを壊しかけていた」なんて取り返しのつかない事態になってしまうことも想定されます。
基本は放置して考えさせるのはいいのかもしれませんが、部下がホントに困っていたり、分からなかったりしていたのなら、前に進めるようにフォローを入れてやることが大切です
②部下が失敗しても深刻な被害が出ず、最悪上司が巻き取れること
部下に「自分で考えろ」と突き放すのであれば、仮に失敗しようと深刻な被害が出ないことが大前提です。
そして、最悪上司が巻き取れるようにしておく必要があります。
部下が仮に自分なりに考えて試行錯誤したやり方だとしても、考えがで稚拙当然失敗してしまうケースもあります。
その場合、深刻な被害が出ないようにしないとけませんし、最悪上司がリカバリーできるようにしておかないといけません。
部下に仕事を雑に振っておいて、責任は一切取らないなんて、最低な上司だと思いますよ
それが出来るから、あなたは上司としてのお給料をもらっているんだよね?
③部下との信頼関係が出来ていること
それから、これが最も大切なことだと思いますが、「自分で考えろ」と部下を突き放すのであれば、上司⇔部下の間にしっかりとした信頼関係が結べていないといけません
上司⇔部下の間で、こういう関係性が築けている?
上司:「この部下なら乗り越えてくれる」と全幅の信頼と期待を寄せる。
部下:部下も十分その気持ちを汲み取ることができ、自分の力で考えてみようと思えている
ほんとに困ったことがあったら、いつでも気兼ねに話が出来る関係が出来ている
上司⇔部下の間で、こういう関係性になっていることが大切です。
信頼関係が築けていないのに、「考える力をつけるために、あえて突き放している」って、独りよがりで自分本位な行為だと思いませんか?
信頼が出来ていないうちから、「あえて突き放す」なんてことをやられた場合、部下にしてみたらこの上司が単なる放置プレイ好きで、無茶振りや嫌がらせをしているようにしか思えず、不信感しか抱かないのではないかと。
使いどころがとても難しい、高度な教育方法だと思いますよ
まとめ
・「考える力を養うために、部下をあえて突き放す」やり方は、実は危険と隣り合わせ
・使う場合は、色々と条件が満たされていることが必要
①考えさせてもいいけど、フォローはしっかりすること
②部下が失敗しても深刻な被害が出ず、最悪上司が巻き取れること
③部下との信頼関係が出来ていること
「考える力を養う」 とても大切な事だと思います。
でも、なんかやり方が間違っていて歪みが生じている残念なケースを、ちらほら散見するので思いの丈を述べさせていただきました。
部下が考える人になるかどうかは、上司のやり方にかかっていると思います。
単に突き放すだけじゃなく、しっかりとフォローしつつ育ててあげてほしいと思います。
~余談~
このWくんとは、転職した後も何度か会って近況を報告しあったことがありました。
このU田さんとの一件が話題になることがあったのですが、
あの後、U田さんと違うチームに移ったら、すごい勉強になって自分の力が上がった気がするし、自然と自分で考えて意見を持てるようになりました。
本来の自分らしい自分に戻ったっていうか… そんな感じがします
Wくんは、考える力をもともと持ってた人だったんじゃないの?
それを変な風に厳しくしちゃって、危うく離職してしまうところだったじゃないか
完全に教育失敗してたってことですなぁ…
南無三…
それでは、本日はここまで お問い合わせやご意見はこちらまで↓↓
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